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アフリカへサファリに行く

マニヤラ編(3)

アフリカへサファリに行く

マニヤラ編(3)

道を渡るシマウマ、湖に浮かぶフラミンゴ

「ゼブラ・クロッシング!」
シンバが嬉しそうに声を上げる。シマウマが右手のほうからやってきて、目の前の道を渡る。ここはまさに横断歩道、英語で言うと「ゼブラ・クロッシング」になるわけだ。車が停まっているからだろうか、数頭のシマウマは慌てる様子も見られない。その広い視野でわれわれを捉えているのはあきらかで、それでも彼らはゆっくりと道路を渡って反対側へ移動する。
こちらが静かにしていれば、シマウマたちも「ポレ・ポレ(ゆっくり、ゆっくり)」だ。

シマ模様が美しい。引き締まったお尻はわずかに上向き、尻尾は絶えずくるくると回るように揺れている。
それぞれのシマ模様は、人間の指紋のように個体ごとに異なるという。なぜシマがあるのかはいまだはっきりしないが、もっとも有力なのは「ウマ科に寄生する危険なハエを寄せ付けないいため」という説だそうで。実験によると、このハエ(ツェツェバエなど)はシマ模様を避け、均一な色に着地するのを好むこと、また他のウマ科の動物にくらべてシマウマだけがツェツェバエの媒介する睡眠病にかかりにくいことなどがわかっている(睡眠病は人にも感染することがあり、最終的には昏睡状態におちいって死に至る)。
おもに草を食べるシマウマは、草を求めて最長2,900kmを移動する。動物は見かけによらず。

「どう、よかった?」
運転席のシンバが後ろを向いてにっこり聞く。もう車を出してもいいかという合図らしい。
「これからピクニックエリアへ向かうよ。眺めがいいんだ。お弁当が積んである。
いっぱい食べよう。ゼブラの赤ちゃんみたいに」

「あのピンクっぽいのが見えるかい?」
お弁当を食べたあと、シンバが湖を指して言う。

望遠レンズで確認すると、マニヤラ湖に大量のピンクが浮かんで見えてくる。
「フラミンゴ。湖の藻を食べにやってくる。藻を食べて体がピンクになるんだよ」

ここから北へ140km進むと、ケニアとの国境にナトロン湖というまた別の湖がある。フラミンゴの大繁殖で有名な湖だ。
そこでは毎年250万羽のフラミンゴが求愛のため「いっせいに」首を振って行進すると言われている。
いったいどんな光景だろう?

藻を食べて体をきれいに染め上げたフラミンゴ。その大群が突如ナトロン湖の浅瀬に立ち、みんな一緒に首をかしげて、愛のうねりを作り出す。どこまでも華麗でいて、どことなくユーモラス。

演舞のあいだ、彼らはほかの鳥たちの動きを注意深く観察する。そこでつがいになるために。
すぐに願いを成就する者、しばらく時間のかかる者、あるいはつがいにならない者。
動物を見て興味深いと思うとき、私はどこか彼らの中に人間らしさを見出しているのかもしれない。