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アフリカへサファリに行く

セレンゲティ編(1)

アフリカへサファリに行く

セレンゲティ編(1)

果てしない平原を行く

朝食後、マニヤラ湖のロッジを発つ。私たちを乗せた車は「セレンゲティ国立公園」へ向けて出発する。

「セレンゲティ」はタンザニア最大の国立公園で、ユネスコの世界遺産。面積はおよそ15,000km2。これは東京・埼玉・神奈川・千葉を合わせた面積よりも大きく、昨日行ったマニヤラの45倍に相当する。
だから「セレンゲティ」という名の由来がマサイ語で「果てしなく拡がる平原」を意味するのだと知ったとき、なんてすてきな名前だろうと感心したのを覚えている。

名づけとは、言ってみればそこに命を吹き込むことだ。ここでは多くの土地がマサイの言葉に由来している。サバンナ地帯「セレンゲティ」は「果てしなく拡がる平原」。クレーターの「ンゴロンゴロ」は「牛の首にかかるベル」の擬音で「大きな穴」の意。アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロは「ンガジェンガ」で「神の家」。マサイたちは名づけにも独特の感性があるのかもしれない。彼らのつけた地名を聞くと、そんなふうに思えてくる。

伝統的なマサイの暮らしは、いまも大地と深くつながり合っている。彼らは「マサイランド」と呼ばれる土地を数年単位で移動する。家畜を育て、家畜によって生計を立て、血族の結びつきを基盤とする。彼らの住まいは、木の枝と灰と牛糞を固めたものでできている。その薄暗い小屋の中、牛の皮を剥いで作った敷物の上で、彼らは毎日兄弟・姉妹と寝起きする。日中は牛や羊を放牧し、風や雲、野生動物たちの動きを読んでは大平原を歩いて渡る。陽が暮れたら小屋に入り、その家屋に身を守られて眠りに落ちる。
彼らの住む世界では、自然と人、人と人、大地のあらゆる生命が、まるで見えない糸で編み込まれているかのように、たがいに結びついている。