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栃木県那須塩原。

コスモスの咲く「旧青木那須別邸」と「道の駅 明治の森・黒磯」のすぐ横に、奈良美智さんのお庭「N’s YARD」がある。

住所 栃木県那須塩原市青木28-3
公式サイト http://www.nsyard.com/

今日はたまたま那須の近くを移動したので、せっかくだからと通り抜けずに寄ってきた。

もともと奈良さんのファンというわけではないけれど、それでもすてきな場所だった。

 

参考:奈良美智さんの最近の作品 [Midnight Surprise /COURTESY PACE GALLERY]
「Midnight Surpriseのような作品は、観る人が自分自身と会話をし、意思疎通できるような存在になるといいなと思います。そのために鑑賞者がそこに居るというような」(ART NEWS, Robert Ayers, 2017) 

 

 

何がすてきだったのかというと………

まず容れものが凝っていた。

長めのポーチをくねくね歩いて見えてくる建物は、まわりの林や空や空気とつながっていて、木のてっぺんのカラスの声や草むらの鈴虫の鳴き声が、すぐそばから自然に聞こえる環境にある。外観はひっそりとしたなかにも凛とした顔つきがあり、けっして人に威圧感を与えず、逆に斜に構えたところも見当たらなくて、ニュートラル。

そして建物の中は、細部にわたって凝りに凝られた印象だ。
建物の設計はもちろん、学芸員の座る椅子から扉の取っ手、吊るし照明の留め具、カフェで出されるコースターにいたるまでその徹底ぶりはあきらかで、ここに置かれる作品を包むであろう世界観づくりというか、そこにたいするコミットメントや熱狂までもが伝わってくるかのよう。

展示もよかった。
奈良美智の初心者もーーー奈良美智ってだれだっけ、ああ、あの目つきのするどい女の子を描いた絵の、というようなーーー「へ〜」「ほお」と楽しめるようなフレンドリーさ、とっつきやすさがかなりある。

館内は撮影禁止だったけど、おもしろかったのはもっとも大きな「展示室4」、奈良さんのアトリエ空間ミニュチュア版。

それは小さなベッド付きの創作小屋で、まるでそのへんの材木やトタンなんかを掻き集め、トンカントンカン手作りで、ペンキを塗ったら出来上がり、というようなマジカル的愛らしさを湛えている。

扉の窓からお部屋をのぞくと、木でできた長い机と小さな椅子、床には奈良さんのドローイングがあちこちに散乱し、まわりの壁や棚の中には、本人のコレクションと思われる人形や動物、オブジェーーー具体的にはロシアのマトリョーシカ、青森のりんご売りの少女、キリスト教的天使のフィギュア、鹿の頭、ピングーのぬいぐるみ、キラキラ星、ドイツやスイスの国旗などーーーが所せましと並んでいる。

まるでこの創作小屋は、奈良さんが頭の中に隠し持つ広大なクローゼット、そのほんの一角をわたしたちに垣間見せてくれるような空間で、そこには西欧や日本やロシア、その他あらゆる不思議な土地の民俗性が凝縮された「小さき者」がおのおの息づく小宇宙があるかのよう。あの目つきのするどい子どもたちも、こんな部屋からひょっこり生まれてきたのかもしれないな、と思わせる。

具体的に観たい方はこの場所へーーー那須の硫黄の温泉もすごくいいみたいだし。

 

 

最後に建物の外へ出てひと歩き、

「森の子(Miss Forest / thinker)」を見て帰路についた。